近年、賃貸市場の変化を肌で感じるようになりました。
人口減少を初めとする様々な要因から賃貸物件のオーナー様にとっても益々競争が激しくなり様々な課題が生じています。
今回は、賃貸経営の成功の鍵のひとつ「テナントリテンション」について考えてみました。
昔と現在の賃貸アパート事情の変化
私が賃貸仲介の仕事を始めた頃は、まだインターネット環境も十分でなく紙媒体の集客も多い時代でした。
にもかかわらず新規のお客様の獲得に困ることは少なく、「礼金2か月」や「敷金2か月」が当たり前の貸し手市場でした。
そんな時代は入居者が次々と入れ替わって原状回復をしてもオーナーさんは十分に賃貸経営をしていけました。
ところが、時代は変わり「敷金0」「フリーレント」と謳ってもなかなか入居者が決まらない…
という借り手市場に。
その主な原因は、
- 人口減少
- 少子高齢化などの人口構造の変化
- 賃貸物件の増加、市場の成熟化
- 価値観の多様性
など様々です。
昔のように入居者が入れ替わればオーナー様に礼金等の収入が入ることも少なくなりました。
そして原状回復のガイドラインの浸透により通常損耗等は入居者に負担してもらうわけにはいきません。
物件が古くなればなるほど退室後に入居者がすぐに決まりずらく、オーナー様にとって入居者が退室してしまうことの負担が昔より大きくなっています。
賃貸アパート経営の成功の鍵
テナントリテンションの重要性
こうした近年の状況から、安定した賃貸経営の成功は、テナントリテンションが鍵となります。
テナントリテンションとは、テナント(入居者)リテンション(保持)という意味。
退室を防ぎ、優良な入居者に長く住んでもらうことで空室を防ぎ稼働率を上げるということがとても重要な時代です。
入居者に長く住んでもらうメリットは、
- 募集のための広告料との費用が抑えられる
- 空室時の収入減がない(安定した賃貸経営ができる)
- 高い家賃をキープできる(家賃を下げて募集しなくて済む)
- 原状回復費用が抑えられる
などがあります。
特に原状回復費用の支出や空室期間の収入減は、オーナー様にとって負担が大きくなります。
入居者が2年で退室してしまう場合と更新契約をして長期間継続して入居してくれた場合のオーナーさんの費用を比べてみましょう。
賃料100,000円、敷金・礼金なしのお部屋を例に期間6年間で試算(税込)してみます。
【入居時費用】業者への広告料(1か月)100,000円
【更新時費用】更新事務手数料(0.5か月)55,000円
【退室時費用】原状回復費用 110,000円
【空室時費用】2か月間の電気料金等 3,000円
費用 | 2年で退室→2か月空室→入居 | 継続して入居の場合 |
入居時 | 広告料 300,000円(3回分) | 広告料 100,000円 |
更新時 | なし | 更新事務手数料 110,000円(2回分) |
退室時 | 原状回復費用 220,000円(2回分) | なし |
空室時 | 電気料金等 6,000円(2か月×2回) | なし |
賃料損失 | 400,000円(4か月分賃料) | なし |
賃料収入合計 | 7,200,000円 | 7,200,000円 |
出費合計 | 926,000円 | 210,000円(更新事務手数料と広告料) |
収支合計 | 6,274,000円 | 7,000,000円 |
オーナー様の収支をみると、72万円ほど差が出ることがわかります。
これが2部屋、3部屋と数が増えればオーナー様の負担はとても大きくなります。
また空室期間が長いと水栓の水漏れやお部屋の不具合が増えることも。
テナントリテンションIKIの取り組み
このような時代にIKIでも入居者さんに長く住んで頂けるよう「テナントリテンション」の取り組みをしています。
住みよい住環境の整備
物件の清掃
ゴミ置き場の清掃や自転車置き場の整理整頓など共用部を清潔に保つことは、住み良い環境作りには欠かせません。
普段からの定期清掃はもちろんですが、空室の巡回点検、清掃も行っています。
修理対応
設備の故障や修理の依頼には、素早い対応が求められることがあります。
特に1次対応は可能な限り素早い対応を心がけ、入居者さんの不満につながらないよう取り組んでいます。
苦情対応
アパート管理に苦情対応はつきものです。
苦情内容は様々ですが、隣の部屋や上の階の方の騒音の苦情も入ることがあります。
設備の修理とはまた違い難しい場合も多々ありますが、双方の立場に立ち仲裁、解決に努めています。
設備
インターネット環境の整備、防犯カメラやTVモニターホンの取り付けなどオーナー様と相談しながら共用部や専用部共に住みよい環境作りをしています。
アンケート調査
更新時やお部屋の修理等でお会いした入居者様に物件の住み心地やご要望などを伺うなどのアンケート調査を実施しています。
「ダイヤル付ポストだったらいいいな」「宅配BOXがあったらいいな」など実際にアパートのお住まいの方からの声を聞くことは、今後の管理に役に立つことや気づかされることが多くあります。
また、逆に退室時に退室する理由をお伺いします。
その答えの中にニーズを発見したり問題点や改善点等はないかを探り、今後に生かせるようにしています。
更新特典
弊社では、入居者さんがお部屋の更新をしてくれた際に更新特典としてギフト券をプレゼントするなどの取り組みをしています。
一定の条件付きではありますが、とても喜んでもらっています。
長く住んでいただけるようなサービスを今後もあれこれ考えていきたいと思っております。
お部屋のグレードUPや外装工事の提案
単純にお部屋の退室時の原状回復だけでなく、必要であればグレードUPやリノベーシンのご提案もしています。
また建物の顔ともいえる外観は、お部屋の内見の際の決めてともなる重要なところですから外装工事をお勧めすることもあります。
アパートは、その物件の状態や場所、オーナー様の経営目的によりどう改善していくかは、個々に違います。
築年数が古くても築浅のアパートに負けない入居率が高いアパートがあるのも事実です。
弊社ではオーナー様とこのアパートの強みは何か?を考えながら収支計画や修繕計画等のご提案とご相談を進めています。
まとめ
賃貸経営は、時代と共に変化しています。
ですが、その時代に合った経営方法を取り入れていきたいですね。
今後もオーナー様と一緒に何が重要かを見極めながら賃貸経営のお手伝いが出来ればと考えております。